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留学の先にある未来

© Saki Kubota

【連載:ドイツで暮らすということ】音楽留学の地としても人気の高いドイツ。オーケストラが数多くあることでも知られています。今回は、現在ドイツでヴァイオリニストとして活動している方へのインタビューを通して「オーケストラの仕事」について詳しくお伝えします!

みなさん、初めまして。ドイツでフリーランスピアニスト・ピアノ講師をしております、久保田早紀です。
今回ドイツ学術交流会(DAAD)東京事務所のウェブサイトにて、留学情報や日々の暮らしのことなど、こちらでのリアルな情報を元に記事を書かせて頂くことになりました。
また、ドイツに留学されていた方やドイツで働いている方たちにフォーカスを当てて「留学後のビジョン」が分かるような記事も書きつつ、日々の暮らしから学んだこと、ドイツの良いところ、留学時の大 変だったことや嬉しかったことなど、ちょっとした体験談なども交えてお話ししていきたいと思います。

今から10年前、ちょうど私が初めてドイツに音楽大学の受験に来た年も、東日本大震災などがあり、卒業式や様々な行事が中止になる大変な年でもありました。ですが、何とかこちらに来ることができ、無事に受験を終え、ケルン音楽大学・大学院、その後デトモルト音楽大学・国家演奏家資格課程に進み、2017年に卒業しました。
それからは毎年、いくつかソロ・室内楽コンサートで演奏させていただいたり、いくつかの音楽学校にて子供から大人の方まで後進の指導にあたっています。

今は新型コロナウイルスの流行でロックダウンが続いていることもあり、ドイツに来ることや、現地の詳しい状況を知ることも難しいかと思います。実際、ここドイツに住んでいても規制が頻繁に変わるため、日々のニュースなどのチェックが欠かせません。
そして今も多くの音楽家がコンサートを行うことが難しい状況で、私の場合も去年3月以降のコンサートはすべて延期となってしまいました。

そんな中、このサイトを通してもっとドイツを身近に感じて「色々な暮らしや仕事、そして生き方があるんだ。」などとポジティブに捉えて頂けたら、そして少しでも皆さんの留学のお役に立てるなら、嬉しいです。

こちらでの投稿は不定期になってしまうかもしれませんが、興味のある方は是非ご覧ください!

今回のゲスト:東あかり(ヴァイオリニスト)

Akari Azuma


千葉県生まれ。3歳よりヴァイオリンを始め、5歳より桐朋学園大学音楽学部附属「子供のための音楽教室」市川分室入室。桐朋女子高等学校音楽科(共学)を経て、桐朋学園大学音楽学部入 学。2009年より渡欧し、ウィーン国立音楽大学にて元ウィーンフィルハーモニー管弦楽団第一コンサートマスター、ライナー・キュッヒル氏に師事。2016年同大学大学院を最優秀の成績で修了。ウィーン楽友協会やウィーンコンツェルトハウスをはじめ、学内外の演奏会に多数出演。第13回千葉市芸術文化新人賞にて奨励賞受賞。
2014年より拠点をドイツに移し、ケルン放送交響楽団アカデミー生として所属し、その後はベートーヴェンオーケストラ・ボン、ケルン・ギュルツェニヒ管弦楽団を経て、現在、デュースブルク・フィルハーモニー管弦楽団の第2ヴァイオリン副首席を務める。日本ではソリストとしてヨハネス・ブラームス・フィルハーモニカー、東京プロムナードフィルハーモニカーと共演。またNHK千葉放送局でのランチタイムコンサートに出演するなど、欧州や日本で幅広く活動している。

以下 インタビュー
久保田(聞き手)
東(話し手)

ー今日はお時間を作っていただき、どうもありがとうございます!東さんに「ドイツのオーケストラで働く」ということについてお話しを伺えること、とても楽しみにしていました!よろしくお願いします。

まずは留学された時期について。多くの方が日本で大学を卒業されてから留学されますが、東さんは早い段階からオーストリア・ウィーンに行かれたんですね。

はい。大学一年生までは日本の音楽大学にいて、一年生を終えた段階ですぐにウィーンに行きました。

ーまだ十代だった時に「留学をする」という大きな決断をされたんですね。ヴァイオリンはいつ頃から習い始めたのですか?

もともとヴァイオリンを始めたきっかけは両親の影響で、彼らは音楽家ではないのですが二人とも楽器の中でヴァイオリンが一番好きということもあって、3歳の時にヴァイオリンを習い始めました。
それで、小学生の時に師事していた先生がお仕事の都合でドイツに行く機会の多い方で、よくドイツのことやドイツ音楽のことを伺っていました。そしてその時から漠然と、「いつかドイツ語圏に留学したいなぁ」という気持ちはありました。

ーそうだったのですね。私も留学を漠然とですが考えるようになったのは、自分の師事していた先生からの影響がありました。自分の先生からの影響って大きいですよね。
東さんがウィーンに行くことを決めたきっかけになった事は何だったのでしょうか?

私が高校生の時、ウィーンの講習会で出会った先生の影響がものすごく強いと思います。初めてその先生のレッスンを受けた時、自分の演奏がテクニック面も音楽性も劇的に変化したのを今でも覚えています。それは周りの人たちにもわかるくらいでした。
それで、大学には一度入学したのですが、その先生への想いが日に日に強くなっていって、一年生を終えた区切りですぐにウィーンへ飛びました。

ー自分の夢に向かってまっすぐに進み、そしてその決断ができた、というのはヴァイオリンへの強い想いがあってこそですね。
ウィーンへ行く前にはドイツ語をどの程度、勉強していましたか?

ドイツ語は、高校生の時に第二外国語でドイツ語を選んでいたのと、ウィーンへ留学する直前にゲーテ・インスティテュート東京に通って学んでいました。あと現地には入試の3か月前くらいに行って、入試までのほぼ毎日、語学学校にも通っていました。

ー日本とウィーンの両方でドイツ語を学ばれて、何か具体的に違う部分はありますか?

日本で学んだ際は、周りの生徒の方も日本人ですし、確か私が受講したクラスは先生も日本人でしたが、ウィーンでは先生は現地の方、そして生徒も多国籍で、日本語が全く通じない中で授業を受けないといけないので大変な面もありますが、自分を追い込むという意味でその時期が一番上達していた気がします。

ーそれは大変ですが、生活の中で何が何でもドイツ語を話していくしかありませんね。他に留学時に、大変だった事ってありますか?

はい。これも語学のことなのですが、全ての授業やテストはドイツ語で行われる。ということです。その前に少し準備してきたとはいえ、語学についていくのが毎日必死でしたし、大変でした。

ーいきなり日々の暮らし全てがドイツ語になる、というのは想像以上に大変ですよね。本当に。最初は特に・・・。
では逆に、すぐにこっちに来てよかったな!と思うことはありますか?

何か変化を求める時、例えば学ぶ場所や環境を変えるなど、若いからこそ何事も柔軟に順応できる部分があるなぁ。と思います。例えば演奏面で言うと、テクニックの変化を先生から求められても、すぐに対応できる。それにより演奏技術が早くの向上して、たくさんのことを早くから吸収できたことは、本当に良かったと思っています。
あとは、外国の街並みや文化を若いうちから肌で感じることができたのも、自分にとっては財産になっています。

・・・ウィーン国立音楽大学を卒業後、ドイツのオーケストラで一団員として演奏する彼女。今まで様々なドイツのオーケストラでも演奏してきて、ドイツのオーケストラについて、またドイツで働く良さについても話を伺った・・・

ーまずは、ドイツのオーケストラで働きたい場合、具体的に何をするべきなのですか?

昔は募集しているオーケストラに直接、郵送で必要書類を送っていましたが、今は一覧になっている「muvac」というウェブサイトがあり、そこから応募もできるようになりました。一部のオーケストラはこちらのサイトに募集を出していないところもあるので、その場合はオーケストラのウェブサイトで直接チェックします。

そして書類が通ればEinladung(招待状)が来ます。これが来て、初めてオーディションに行くことができます。申し込んでも、このEinladungは来ないこともしばしば・・・。

オーディションでは、だいたいのオーケストラが1日で1次から3次までの審査があり、結果も当日わかります。合格できるのはだいたい1、2人くらい。

ーなるほど。中々厳しい世界ですね。現在はドイツ・デュースブルクの副首席・奏者としてオーケストラを引っ張って行っている東さんですが、ドイツのオーケストラで働く厳しさはありますか?

はい。ドイツのオーケストラは、入団しても試用期間というものがあって、その期間はだいたいどのオーケストラも1〜1年半程です。その期間内に、だいたいの様子を見られて、試用期間が終わってもそのオーケストラに残れるか、または残れないか、が決定します。だからこの期間中はものすごく神経を使うので「大変だな」と感じます。

ー一度そのオーケストラに入団しても、最初はまず試用期間というものがあるのですね。それはなかなか気が抜けませんね・・・。では逆に、ドイツのオーケストラで働いていてよかった!と思うことはありますか?

それは、夏休みが4〜6週間程取れたり、もし自分が産休・育休を取りたい場合も最長で3年まで休むことが可能なことです。あとは、演奏旅行などを通して、様々な国で演奏できることです。

ー休みを長く取れる、ということはとてもありがたいですね。また演奏を通じていろんな国を訪れることは、その国独自の文化や人との出会いからも、沢山のことを学べますよね。私もここドイツにいて他のヨーロッパの国々へ行き演奏をする際などに、良くそのようなことを感じます。

あ、あともう一つありました!友人などに自分の演奏するコンサートのチケットを取れることです。人 気のコンサートですと難しい場合もありますが、基本的に招待することができます。

ー私も東さんに何度かチケットをいただいたことがあります。どのコンサートも本当に印象的で素晴らしく、今でもはっきりと覚えています!ありがとうございました!

では最後になりましたが、東さんから「これからドイツに留学したい方、ドイツに来ることを考えている方」に、メッセージをお願いします!

この状況下での留学や渡航は大変なことも多いと思いますし、文化の違いなど戸惑うこともあるかもしれませんが、ご自身の夢や目標に向かって、失敗を恐れず突き進んでいってください!

東さん、本日は本当にどうもありがとうございました!

こちらに書ききれなかったお話はYouTubeの方で見ることもできます。
ぜひそちらもご覧ください!

(取材・文:久保田早紀)

※タイトル下の写真=ケルン・ギュルツェニヒ管弦楽団(Gürzenich-Orchester Köln)新型コロナウイルス感染拡大前2020年2月に撮影

【ドイツで働く日本人】留学/ インタビュー/ ヴァイオリニスト/オーケストラ /働き方

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久保田早紀 プロフィール

Saki Kubota


国立音楽大学附属中学校・高等学校を経て、同大学音楽学部演奏学科卒業、及び鍵盤楽器ソリストコース修了後、渡独。ケルン音楽大学大学院修士課程ソリスト科に入学し、ヤコブ ・ロイシュナー教授の元で 研鑽を積む。 同大学院 を最優秀の成績で 修了後、デ トモルト音楽大学にてさらなる研鑽を積み、2017年ド イツ国家演奏家資格を取得。
第28回ソレイユ音楽コンクールピ アノ部門にて第1位、及び音楽現代新人賞を受賞。東京文化会館にて受賞記念コンサートに出演し、ウィーン国立音楽大学夏期国際音楽アカデ ミー/ウィーン・プ ラハ・ブ ダ ペ スト(ISA)に奨学生として招待される。2013年イスキア国際ピ アノコンクール(イタリア)にて第1位を受賞の他、国内外のコンクール等で 多数受賞。日本学生支援機構(JASSO)より大学在学中の業績を認められ、平成22年度優秀学生顕彰文化・芸術分野奨励賞を受賞。
近年では、ポ ーランド にてToruń Symphony Orchestraとシューマンのピ アノ協奏曲を共演し、好評を博す。また日本のみならず、国内外にてソロ及び室内楽のコンサートにも多数出演。

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