留学の先にある未来【仕事編】
今回のゲスト・梅村知世さん

岡山県出身。東京藝術大学を首席で卒業。同大学院修士課程修了。文化庁新進芸術家海外研修生として渡独、ローム・ミュージックファンデーション奨学生としてベルリン芸術大学修士課程、及び国家演奏家資格課程を最優秀の成績で修了。日本やドイツを中心に演奏活動、後進の指導を行っている。
日本音楽コンクール入選。ピティナ・ピアノコンペティションにて特級グランプリ及び聴衆賞を受賞。シュナーベル国際コンクール第2位、ロベルト・シューマン国際コンクールにて最高位を受賞。岡山芸術文化賞グランプリ、福武文化奨励賞を受賞。オクタヴィア・レコードよりCD「シューマンVol.1・Vol.2」をリリース。現在、ケルン音楽大学にて講師を務める。
【仕事編】
以下 インタビュー
久保田(聞き手)
梅村さん (話し手)
―様々な経験を経て、現在ドイツでピアニスト・講師として活動されていますが、留学する際は最初からドイツに残ることを決めていたのでしょうか?
いいえ!それは全く思っていなくて、留学当初は学業を終えたら帰国することを考えていました。ですが、ベルリン芸大を卒業する頃にはもう少し残りたいと思うようになってきました。
ドイツに残るためには大学を卒業したら仕事を探してビザを取得しなければならなくて、その年収を外国人局にも提出しなければならず、必死に仕事を探していました。
また、卒業する時には「何歳までコンクールを受けるか、どこでコンクールを卒業するか」と考えていましたが、やはり収入がないと生活していけないと思ったことがドイツで仕事していくことに繋がりました。あとは家族ができたことも、大きな理由の一つです。
−なるほど、留学当初から見ると色々と変化していったのですね。ドイツ留学は今のご自身の活動・仕事において活かされているように感じますか?
はい、特に語学の面でそう感じます。ドイツでのレッスンの雰囲気は日本と少し違うような感じがしていて、そういう雰囲気の違いやドイツ語でのレッスンにおいても留学中の経験がとても役立っているように感じます。
また、音楽の面においても、先生から教えていただいたことが今の私の軸になっています。ベルリンでの留学生活、音楽活動、レッスン、全てが今の自分を作り上げているように感じます。実際に自分でレッスンしていても、先生のレッスンの仕方などからとても影響を受けていますし、レッスン中に、先生から教えていただいたことと同じ事を自然と言っている自分に時々びっくりしたりします(笑)。
―そうなのですね!留学中に学んだ多くのことが今の仕事に活かせていると自信にも繋がりますよね。
仕事繋がりでお聞きしたいのですが、私はドイツ語で仕事をする際に、たまに演じているというか、声のトーンを変えてみたり、ジェスチャーを少し大袈裟にしてみたり、いつもと違う自分のようにふるまう時があるのですが、梅村さんはいかがですか?
私は逆かもしれません(笑)。例えば日本語でのレッスンは母国語ということもあるのか、表情の変化なども交えて伝えることが多いのですが、ドイツ語を話している自分は割と淡々としています。変な話、怒る時はドイツ語の方が怒りやすかったりします。そんなに多くは無いですけどね。日本ではそこまで強く言わなくてよくても、ドイツではハッキリ言わないと伝わらない部分もあるので。そこは自分にスイッチを入れて頑張っています(汗)。
―ははは、そうなのですね。確かに国や人の気質も国によって違いますよね。そんな様々な経験を通してドイツ滞在歴も長くなってきた梅村さんですが、今後の目標などはありますか?
今は、ドイツと日本で活動させてもらっていることを、両国で活かせれば良いなと思っています。例えば、日本の生徒さんにはドイツの文化などを伝えていきたいですし、ドイツの生徒さんには日本の真面目さや賢勉さのようなものも伝えていきたいです。今は娘もいて中々コンサートに出向くのは難しいのですが、学生時代にベルリンで聴いた素晴らしいコンサートの数々は耳が覚えているので、そこも含めて生徒さん達に伝えていけたらいいな、と思っています。
―現在ドイツでお仕事なさっている梅村さんですが、ドイツで仕事をしていく上で何か大切にされていることなどはありますか?
まず第一に人との繋がりです。久保田さんとお友達になれたから現在こうやってインタビューの機会をいただけることもそうですし、人との繋がりを通して様々な仕事に結びついていくことって沢山あると思います。また異国のドイツだからこそそう強く感じるのかもしれませんが、ご縁や繋がりというものを大切にして仕事をしています。ベルリンで出来た友達も、今でも支えてくれる大切な仲間です。
そして次は語学です。ドイツで学ぶにも仕事をするにも、やはり「ドイツ語」がとても大切になってきます。母国語とするドイツ人には敵わないですが、ここで暮らしていくのならそこに少しでも近づいていかないといけないな、と最近特に強く思います。
―まさにその通りですよね。
私はまだまだなのですが、話せれば話せるだけ良いなと思います。例えばどこかの学校、大学などで教えるにしても語学がネックになってチャンスを逃してしまうと残念なので。ドイツ語に限らず、どんな言語でも現地の言葉で話すことはとても大切だと感じます。

―最後に、これからドイツで留学したい方、仕事をしたい方々へ向けて、メッセージをお願いします。
みなさん、ぜひドイツの空気を吸って学び、生活してみてください!
今はだいぶグローバル化が進み、バーチャルで経験することもできるかもしれません。ですが、こちらに来て、住んで、空気を肌で感じることは、少しの期間であってもやはり違うと思います。どんな形でも構いません。もし少しでも興味があるなら実際に足を運び、ご自身で感じてみてください。それが人としての引き出しを増やすことに繋がってくると思います。勇気を振り絞ってぜひ一度トライしてみてもらいたいです!
(取材・文:久保田早紀)
久保田早紀 プロフィール

国立音楽大学附属中学校・高等学校を経て、同大学音楽学部演奏学科卒業、及び鍵盤楽器ソリストコース修了後、渡独。ケルン音楽大学大学院修士課程ソリスト科に入学し、ヤコブ・ロイシュナー教授の元で研鑽を積む。同大学院を最優秀の成績で修了後、デトモルト音楽大学にてさらなる研鑽を積み、2017年ドイツ国家演奏家資格を取得。
第28回ソレイユ音楽コンクールピアノ部門にて第1位、及び音楽現代新人賞を受賞。東京文化会館にて受賞記念コンサートに出演し、ウィーン国立音楽大学夏期国際音楽アカデミー/ウィーン・プラハ・ブダペスト(ISA)に奨学生として招待される。2013年イスキア国際ピアノコンクール(イタリア)にて第1位を受賞の他、国内外のコンクール等で多数受賞。日本学生支援機構(JASSO)より大学在学中の業績を認められ、平成22年度優秀学生顕彰文化・芸術分野奨励賞を受賞。
近年では、ポーランドにてToruń Symphony Orchestraとシューマンのピアノ協奏曲を共演し、好評を博す。また日本のみならず、国内外にてソロ及び室内楽のコンサートにも多数出演。2023年より国立音楽大学ピアノ科非常勤講師。